「After Hour Session」はエグゼクティブコーチ株式会社が運営するポッドキャスト番組。
当社従業員がメインパーソナリティを務め、様々なゲストとともに「経営やコーチングの今」をお届けしています。
このブログでは、番組の内容をわかりやすい記事にして紹介します。
第20回は「コーチが語る戦略実行に必要なもの(パートナーコーチ桜庭さん)後編」です。
サマリー
・リーダーが自分を主語に語り始めた時、組織の戦略実行力が上がる兆しが見える
・些細な内面の変化を見逃さず、自分の現在地を深く知るための鏡がコーチ
・今の時代のリーダーは誰しもが悩み迷って当たり前。第三者の支援を是非活用して欲しい
それでは本編をお楽しみください。
井上:前回に引き続き、エグゼクティブコーチ社アカウントマネジメント部の木村さん、スペシャルゲストのパートナーコーチ桜庭さんと一緒にお届けします。
前回はエグゼクティブコーチ社が掲げる戦略実行支援について、外資系企業ではどのようなことが起きているのかの大枠を伺いました。今回は一歩踏み込んで、実際のコーチングセッションの現場で何が起きているかをお話していきます。
さっそく桜庭さんに伺いたいのですが、コーチとしてご支援をされていらっしゃる中で、クライアントにどのような変化が見られると組織の戦略実行力が上がる兆しを感じますか?
桜庭:一番わかりやすいのは、言葉が変わることです。
やはり人は「やらされ感」があるうちは無意識的に心が被害者・犠牲者のようになってしまいます。なので、難しい・でも・上が決めたことだから・会社の方針だから仕方がない、といった言葉が出やすいです。ボキャブラリーの傾向として「彼ら(会社や上司)と我ら」といった立場の分断が現れやすくなります。
コーチングを受ける過程でだんだんとそういった言葉が消えていき、「こういう状況があるけれども、私はこうしたい」「私はこう考える」「うちのチームではこれを実現する」という自分を主語とする言葉が出てくるようになると、部下への関わり方が変わっていきます。
すると指示ではなくチームのメンバーにちゃんとオーナーシップを持ってもらえるような問いかけができるようになり、こうした対話ができるようになると組織の実行力が上がる兆しを感じます。
組織全体にだんだんと戦略が波及していき、さらにそれを自分ごととして実行していく人が増えることが我々のようなコーチが伴走することのゴールなので、静かに確実に実行力が上がっていくサインとして「言葉の変化」に注目しています。
木村:言葉の変化は意外と気付いてもらいにくいと思うのですが、コーチの皆さんは気付いた時にはクライアントの方にフィードバックをしたりするんですか?
桜庭:はい、します。
コーチというのは鏡のような存在なのですが、この鏡は目の前だけでなく斜めや後ろにも設置することで360度いろんな角度から自分を見れるようにするものなんです。自分では盲点になっている部分が見えるようになったり、見方の癖をなくすことで新たな見え方に気付いてもらうことが役目です。
私たちは盲点や癖を指摘するのではなくて、「このように見えていますけど、別の視点からはこのようなデータもあります。どう受け取りますか?どう解釈されますか?」というオファーをします。あくまでご本人が受け取り解釈することについて、伴走している感じです。
木村:コーチは鏡であるという話は聞いたことがありましたが、一側面だけの鏡ではないという点に今すごくハッとしました。言葉が変わるまでには時間がかかりそうだなと思うのですが、桜庭さんのご経験の中だと、どのくらいの期間で言葉に変化が現れますか?
桜庭:クライアントによって言語化の得意不得意はあるので、コーチとしては色々なシグナルをキャッチできるアンテナを訓練することでデータを取りやすくしています。
例えば言葉にすぐに現れない方でも、何も変化がないわけではなくて内的な感情や体感は変わっていることもあります。例えば手に汗を握っている状態とか、考えている時の目線や沈黙の長さなど、何気ない非言語的な動作の中にもシグナルはあります。
こうしたシグナルをキャッチして相手の変化を見極め、対話の中に活かしていくスキルがコーチに備わっているとクライアントへも有意義なフィードバックができます。
木村:コーチが細かいところまで観察することの重要性が伝わってきました。直接お会いしていれば非言語的なシグナルに気付きやすい気がしますが、オンラインの環境だとわかりにくいと感じる人も多いのではないかと思います。桜庭さんはどう考えていますか?
桜庭:リアルでお会いした方がシグナルなどのデータを得られる感覚は強いです。例えば汗をかいている人の体温などはオンライン上だと感じることができません。
ただ、声のスピード・高低・トーン、他には姿勢や居心地が悪そうにもぞもぞ座り直したりする様子とか、目線の動きからも脳がどう働いているのかなどは捉えられます。1つ1つの行動から「今こうでしたよね?」と決めつけるのではなくて、「何かが変わった」ということを示す違和感としてシグナルをキャッチしています。
それを相手へどう伝えるかにおいては、「何かを一生懸命考えているように見えましたけど、今のお考えをよろしければ共有していただけますか?」「難しいという言葉とともに腕を何度か組んでいらっしゃいましたが、ご自身では気付いていましたか?」と投げかけるだけでも十分です。
全く無意識だったことに気付くだけで、自己認識は上がります。本人が気付いていなかったことに気付くためのお手伝いとして、コーチが普段と違う角度で鏡を立てている感じです。
木村:プロコーチとしてのテクニックのお話でもありつつ、全てのリーダーにとっても自分のメンバーと対話をするときに観察するべき点として大事だなと思いました。桜庭さんのお考えとしては、今の時代のリーダーにはどんなことが重要だと思いますか?
桜庭:リーダーシップを取る必要のある人やメンバーを抱えるポジションの方に一番伝えたいことは、「正解のない時代の最前線にいることを、まず認識していただきたい」ということです。
今の時代の戦略実行は、地図のない道を歩くようなことなんです。私も含め、昔はある程度背中を見てついていく先輩方がいました。しかし今は地図のない道を歩いているので、その人たちの知見が必ずしも戦略実行の役に立つかというとそうでなはいこともあります。
先輩方を否定するわけではなくて、「もう適していない」という意味です。地図のない道を歩く時に必要なのは完璧な計画ではなくて、どんな状況でも自分の軸で判断すること。そして失敗したとしても自分の中で腹落ち感があるかないかが大切です。
これが自分が立ち上がってチームを率いていく時に勇気や原動力になるので、自分の価値観や生き方に軸を持っていることがこれからのリーダーに必要なスキルだと思います。
こうした教育は職場でもちゃんと行う必要があり、そうでないとピープルマネージャーが苦しいだけの仕事になってしまいます。教育というのは何かのスキルを教えることではなく、対話を通して1人ひとりの人が自分の内面を鍛えて軸を見つけることに真剣に投資することです。
木村:30代は自分が何者であるかをずっと考えながら仕事をしてきましたが、なかなか答えが出ず今もなお遠回りをしながら考えを深めているところです。桜庭さんのお話はすごく参考になりました。
桜庭:自分自身だけで考えているとぐるぐる思考が巡ってしまうので、やはり他者の存在が必要だと思います。自分に利害関係のない他者が必要なので、コーチングはぴったりだと思います。
最前線にいるリーダーにこそコーチとともに自分の内側を鍛える時間を持って欲しいですし、会社にもそのための投資をしてもらいたいなと思っています。
井上:戦略実行の最前線に立つリーダーたちに、桜庭さんから一番伝えたいメッセージは何でしょうか?
桜庭:あなただけじゃない、ということです。「私は悪いリーダーなのではないか?」「私はチームを預かってはいけないマネージャーなんじゃないか?」などと心配する必要はありません。
先ほども言ったように正解のない時代の最前線にいることを自覚して、楽になって欲しいです。どのリーダーも、今は同じ地点にいます。答えがない地図のない道を歩むことを期待される中で、正義感や責任感を持って何とか進もうとしているのはあなただけではありません。それをまず知ってください。
そして不適合かどうかや能力があるかないかをジャッジする前に、「どういうヘルプが必要なのか」を考えて支援してくれる人を社内外で見つけてください。自分の気持ちと頭の整理をするプロと一緒に現状をクリアにしてから、補強すべきアクションを起こしてみて、最後に向いている・向いていないを決めれば良いと思います。
そのくらい難易度の高い市況感の中でリーダーを期待されていることを自覚して、自分で自分をバッシングしないでほしいなというのが私の伝えたいメッセージです。
井上:この番組では管理職の方々の孤独感や責任感ゆえの自責の念を支援していきたいというお話をよくしていますが、桜庭さんの力強いメッセージに励まされる視聴者さんがきっと多いだろうなと思いました。
コーチングによる支援の必要性も改めて感じました。会社側もミドルマネージャーや管理職の方々に任せるだけではなく、任せるからにはきちんと支援する環境を整えられるように考えないといけないのだなと思います。
桜庭さん、木村さん、貴重なお話をありがとうございました。
桜庭・木村:ありがとうございました。
井上:本日も最後までお聴きいただきありがとうございました。
次回も少し肩の力を抜いてお付き合いください。
番組はご利用のポッドキャストサービスでお聴きいただけます。
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