人事制度改定後にこの壁にぶつかる企業は少なくない。三井住友銀行では、2026年1月の大規模な制度刷新を機に、1,000名規模のミドルマネージャーを対象としたコーチング施策を展開。
受講前後のセルフチェックでは、ピープルマネジメントを「実践できている」と答える割合が約20%向上した。
制度改定だけでは動かない現場を、どうやって動かすのか。その問いへの答えが、この事例にある。

渡邉 貴彦氏
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
常務執行役員
株式会社三井住友銀行
常務執行役員

橋場 剛
ビジネスコーチ株式会社
取締役副社長
事例サマリー
企業名:株式会社三井住友銀行
対象:ミドルマネージャー(グループ長他)約1,000名
背景:組織の多様化、2026年1月の抜本的な人事制度改定
施策:1対1コーチングプログラムの導入
主な変化:ピープルマネジメントを「実践できている」と答える割合が受講前後で約20%向上
組織の多様化と制度改定の中で、ミドル層の役割が変わっていた
三井住友銀行がミドルマネージャー層に対して大規模なコーチング施策を導入した背景には、組織と人材の変化があった。
かつては国内銀行業を中心とした事業構造の中で、比較的近い価値観を持つ人たちが多かった。一方、現在はグループ会社や海外事業の比率が高まり、多様な人材が参画している。
そうした変化の中で、以前は自然に共有されていた一体感や目標意識が、次第に薄れつつあった。
だからこそ、トップのメッセージを現場で受け止め、それぞれの部署で自分の言葉にして伝えていくミドルマネージャーの役割が、これまで以上に重要になっていた。
加えて、2026年1月には、合併後初となる抜本的な人事制度改定が実施された。事業ごとに評価項目を変え、評価やキャリアサポートをより現場に寄せる方針となったことで、現場のマネージャーには従来以上に高いピープルマネジメント力が求められるようになった。
制度を整えるだけでは、現場の行動は変わらない。ミドルマネージャー自身が新しい役割を腹落ちし、自分の言葉でチームに伝え、実践していく必要があった。
そこで、その変化を後押しする方法としてコーチングが選ばれた。
「外部の人に言ってもらう方が、素直に受け取れる」という結論
三井住友銀行では、ミドルマネージャーへの支援方法として、外部コーチによる1対1コーチングを活用した。
自分一人で課題を見つけ、整理するのは簡単ではなく、第三者から問いかけを受けることで、課題意識がより明確になると考えられていたためだ。
また、社内での議論の中では、「外部の人に言ってもらう方が、素直に受け取れる」という結論にも至っている。
さらに、現場の状況や個人の課題に応じて、実践と振り返りを重ねていくには、一定期間を空けて行う1対1コーチングが適していると考えられた。
手挙げ制にした理由―やらされ感をゼロにする設計
ミドルマネージャーは多忙であり、新しい施策に対しては、どうしても後回しになったり、やらされ感が生まれたりしやすい。
そこで三井住友銀行が採ったのが、「手挙げ制」という運用だった。資格のように、受けなければ業務ができないものではない以上、無理に受けてもらっても意味がない。
だからこそ、誰と取り組むか、いつ受けるか、どのテーマで話すかを、自分で選べるようにした。
また、コーチングの時間を「会社のため」ではなく、「自分自身のための時間」と位置づけたことも特徴の一つである。
この考え方によって、受講者は施策を会社から与えられたものではなく、自分にとって意味のある機会として受け止めやすくなった。
実際に、複数回受講する人や、受けてよかったと周囲に勧める人も出てきており、現場の中で前向きに受け入れられていったことがうかがえる。
変わったのは「意識」だけではなく「行動」だった
受講前後のセルフチェックで、ピープルマネジメントを「実践できている」と答える割合が約20%向上した。
多くのマネージャーは必要性を頭では理解している。
しかし実際には、日々の業務に追われる中で、部下との対話やフィードバックが後回しになりやすい。三井住友銀行でも、必要性は感じていても、なかなか行動に移せない場面があった。
コーチングは、そうした状況の中で「第一歩を踏み出す支援」として機能した。受講者は、コーチとの対話を通じて、自分の中にあった曖昧な課題意識を言語化し、具体的な打ち手へと落とし込めるようになった。
ピープルマネジメントは、適切な支援があれば、確かに行動として変えていける。
この数字は、そのことを示している。
ミドルの一番のミッションは、チームの力を上げること
「忙しいからピープルマネジメントを後回しにする、というのは本末転倒だと思っています。
チームの力を上げ、同じ方向に率いていくことこそが、ミドルリーダーの一番のミッションです。」—— 渡邉常務執行役員
三井住友銀行では、トップが方向性を示すだけでなく、ミドルマネージャー自身がそれを受け止め、自ら行動し、周囲が動けるよう支えていくことが重視されている。
その実践を後押しする手段の一つとして、コーチングが活用されていた。
こんな企業におすすめの事例です
・人事制度を見直したが、現場マネジメントの変化までつながっていない
・ミドルマネージャーに求める役割が拡大している
・部下との対話やフィードバックの質を高めたい
・研修だけでは行動変容に届きにくいと感じている
・内製だけではスピードや浸透に限界を感じている
制度改定後の定着支援、ミドルマネジメント強化、ピープルマネジメント力向上に向けた施策をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
エグゼクティブコーチ株式会社